登記に公信力なし、とは
登記に公信力なし、とは
売主Aさんと、買主Bさんが売買契約を結びました。しかし、この不動産のもともとの所有者は売主Aさんの父親で、Aさんに移転登記したことはなく、Aさんが勝手に登記済証等を悪用して移転登記をしていたとします。つまり、買主Bさんは売主Aさんが本物の所有者だと信じて契約してしまった場合です。結論は、買主Bさんはその不動産を手に入れることはできません。というのも、登記をしていても売主Aさんは無権限だからです。この場合、Aさんの父親はただ知らなかっただけで、何も悪いことをしているわけではありません。そこで法律上、Aさんの父親は保護される対象になるということのようです。
一方で、それが本物の登記であると信じたBさんは保護されません。
登記にあることを信じても、それによって権利を主張することができないということです。これを登記に公信力なしというようです。
買主Bさんは、登記簿に前の所有者の名前が書いてありますから、この場合、Aの父親に確認する必要があったということです。
しかし、A名義の登記の作出について、真の所有者であるAの父親が何らかの形でかかわっているのであれば、真の権利者の保護よりも取引の安全を重視してCを保護すべきである、との考えも充分成り立ちえます。通謀虚偽表示について規定している民法94条2項や、民法94条2項の類推適用の判例もあります。